河口湖マラソン


11月30日(日)
河口湖マラソンに行ってきました。
今回で17回目の参加になる年中行事化した大会ですが、今年こそやめてやるかと3日前まで思っていました。今月軽く風邪をひいてから咳がきちんと止まらずに3週間も走っていないし、体重も80kgに増えてしまったからです。でも、10年続けて一緒に参加してた友達が4年振りに参加するということで、「どうするんですか?」と連絡をくれたので、行くだけいくことにしたのです。
土曜日の夜、僕のクルマで、男3人河口湖に移動しました。エアコンが故障していてヒーターがきかないのですが、フロントガラスが曇ってしまうのでクーラーをかけながら走りました。隣りで4年振りに参加の友達が寒そうにしている気がしましたが、しらばっくれていたものです。
やがて河口湖の富士健康センターに到着し、風呂に入って、仮眠しました。
朝、マラソンは7時30分スタートなので、あたふたでかけ、受付を済ませて着替えました。そして、友達に「今日は調子悪いので、いつ帰ってこれるかわからない」と言い訳して別れました。
トイレに行ってから時間ギリギリにスタート地点に並ぶと最後尾の方になってしまいました。前の方に並ぶには30分前から並んでいなければならないのです。用意してきた携帯音楽プレイヤーでピンクレディーを聴きながらスタートの合図を聞きましたが、1万人以上参加しているので、スタートラインを越えたのは18分後でした。
走り出してもゆっくりでしたが、今日はのんびり行こうと自分に言い聞かせていました。でもやがて気がつきました。これだけ後ろからスタートすると、混んでて前に進まないというより、僕よりもさらにやる気の無い人たちが多いようなのです。仕方がないので抜かしながら走り始めました。人を縫うように走ったり、歩道に乗ったり降りたりを繰り返しながら走ると疲れるし、後で脚がつる原因になったりするのでやらない方がいいのですが、ペースの合う人々のところまで行かないとかえって疲れてしまうと思ったのでした。
そんなこんなでいつの間にやら10km、さらに20kmとダバダバ走りましたが、やはり21kmの中間地点で脚が攣ってしまいました。脚が攣ってもしばらく歩いているとやがて治まり、また走れるようになるので、道の端を歩きました。走ってる人たちが横を通り過ぎ、前の方に遠ざかっていきます。湖畔を左回りに走るので、ずいぶん先まで見えたりするのです。僕も走っていたらあすこまで行ってたんだなと、遠ざかる人を目で追いながら少し切なくなったものです。やがて、脚の攣りが治まると、切なさをバネにして走りましたが、すこし走るとまた攣りました。攣って、歩いて、切なさをバネにしてまた走るを何度か繰り返しましたが、やがてくたびれてくるとくつろいで歩くようになってしまいました。遠ざかっていく人たちを見ても切なさを感じません。
すると、30km付近にコンビニがありました。ホットコーヒーとパンを買って、店の前で休みながら食べました。走ってる人を眺めながら、「よくやるよ」と傍観者のように思ったものです。マラソンの途中でコンビニに寄ったのは初めてで、サボるのも開放感があっていいなと知りました。また、「少しばかり速く走っても何も世間の役にもたたないし、あんまり頑張ると体に悪いよ」などと言い訳を考えていました。
その後も、少し走ってしばらく歩くを繰り返すと、河口湖の西端の方に近づいていきました。そのあたりは富士山の眺めがとてもいいのです。晴天ですから、山腹の雪面が日光を反射してキラキラ光っています。河口湖の向こうに広がる雪の富士山と青空を体で感じるように眺めながら、走るよりもこの自然を堪能すべきだと新たな言い訳を考え、ガードレールにもたれかかりながら富士を見つめていたものでした。
そんな僕にも35km地点はやってきました。西湖に向かう道が分岐する辺りで、ここを過ぎると河口湖大橋の方に向けてどんどん戻っていくのです。ダラダラ歩いてきたので、さすがに最後くらい頑張ろうかと微妙に思いました。すると過去の河口湖マラソンの記憶が思い出されました。35km地点で楽に走ってたことは一度もなかったし、つらくてもたいてい頑張っていたじゃないかと思いました。切ない気持ちになりました。走りたいと思いました。そして、携帯音楽プレイヤーを「仮面ライダー全曲集」にセットしました。そして、走り始めました。
走りたくても走れない、頑張りたくても頑張れないのがフルマラソンですから、1kmでもいいからと思って走りつつ、「心のタイフーンを回すんだ!変身するんだ!」と仮面ライダーを聴きながら思っていました。脚がどうせ攣るだろうとビクビクしながら走りましたが、1km,2kmと走り続けられました。そして、ゴールまであと5km地点辺りで、ランナーズハイの状態になりました。ポッーとした気分になって、足どりは軽く、つらくても気持ちいいのです。たいてい20km地点前後でなることが多いので、35kmを過ぎてからなるなんて初めてだと思いつつ、ポッーとした気分の中に埋没していました。いつまでも続くわけではないので、「もうすこしこのまま」と思いながら走っていると、あと3km地点の手前にある給水所まで来ました。スポーツドリンクの他に、きのこの山たけのこの里、アポロチョコレートなども置いてあるいつもとてもありがたいと思う給水所なのですが、素通りしました。
あと2km地点までこのまま行ければと思いながら走っていると、沿道で応援してる人の声が聞こえます。綺麗な声のお姉さんが大きな声で「ゴールは近い・あなたの道・明日へ・続いてる」とみんなを応援してしています。通常なら、聞いてて気恥ずかしいような気分になって、心の中でハリセンではたいてやりたくなるような応援ですが、仮面ライダーを聴きながらランナーズハイ状態ですから「ありがとう」と思いました。
あと2km地点を過ぎると、正面に富士山が大きく広がります。少し上りますが、ゴール前のうれしい場所ですし、「また夏に登りにいきます」と富士山に挨拶する場所でもあります。だいぶつらくなっていてもここまで来れば何とか頑張れるのです。
あと1kmを過ぎ、旅館街の方に来て、ゴールまで走れると確信しました。35km過ぎをきちんと走れるなんて、めずらしいパターンだと思い、ずいぶんヘボヘボな気分で歩いたり休んだりしたけれど、最後の頑張りによって救われたなと思いました。
ゴールゲートが見えました。仮面ライダーの歌を聴いていました。「ありがとう。仮面ライダー」と思いながらゴールゲートに吸い込まれるように走りました。ゴールゲートをくぐった時、心の中のショッカーに勝ったような気分になったものでした。